空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 その後、海上保安庁のデモンストレーションは外で続いていると聞き、私たちアルカディアポートホテルの従業員はそれを見学することになった。
 これは、見物客へ海上保安庁の周知や、海でのレジャー時の注意喚起のために行われているのだそう。

 マルマロスロードに出ると、巡視艇が向きを変え遊歩道横に接岸していた。巡視艇の電光掲示板には、なぜか『強風注意』と書かれている。

 パタパタという音がして見上げると、上空では〝みみずく〟が旋回していた。

『まもなく、上空をヘリコプターが参ります。強い風が吹き抜けますので、帽子等飛ばされぬよう、ご注意ください』

 巡視艇からアナウンスが流れる。するとそのすぐ後、〝みみずく〟がプロペラの音を響かせこちらに飛んでくる。そこからは、身を乗り出すオレンジ服の海上保安官が三人いた。

 彼らはそれぞれ、順番にロープ一本で身軽にこちらに降りてくる。

 その時、ぴゅうっとひときわ強い風が辺りを吹き抜け、私は飛ばされないようにと身をかがめた。同時に、ヘリコプターは飛び去ってゆく。
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