空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 入り口を入ったときは少し足が竦んでしまったが、凌守さんに差し出された左手を掴んでなんとか水槽の前にやってきた。

「わあ」

 入り口付近には、小さめの水槽がいくつも並んでおり、小さくカラフルな魚やサンゴ、イソギンチャクが展示されていた。
 ちょこちょこ泳ぐそのさまは、まるで小さな子供のようだ。

「可愛いですね」

 当たり前のことなのに、忘れていた。海の中には、こういう小さな魚たちも住んでいる。

「暖かい海にいる魚たちですね。沖縄でダイビングしたときに、俺もこういう光景を見ました」

 サンゴ礁の海を泳ぐ小魚たちを脳裏に思い浮かべ、それで思い出した。

 幼い頃、自宅のカレンダーは、いつも南の海の魚たちだった。カラフルで可愛いらしい魚たちを前に、母と父と過ごした懐かしい日々を思い出す。
 父も母も、結婚前はよくダイビングに出かけていたと話していた。

 幼い頃の、楽しかった父と母との三人暮らし。脳の奥に仕舞い込んでいた思い出が、たくさんフラッシュバックする。あの頃、私は海が大好きだった。
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