空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 海は、怖い。だけど、海という大地の恵みは、時に素晴らしい景色を生み出す。
 懐かしさと同時に、自然への畏敬の念が生まれた。

「きっと、綺麗なんでしょうね。私もいつか、見てみたいな」
「ではいつか、一緒に行きましょうか。この、綺麗な海を見に」
「え?」

 ぽろりと零した私の言葉に返ってきた、思わぬ提案。驚き、彼を振り向く。
 思ったよりも近くに彼の顔があり、どきりと胸が大きく鳴った。
 水槽に夢中になっていて気付かなかったが、どうやら私たちは二人で、この小さな水槽を覗き込むように見ていたらしい。

 笑顔で見つめられ、恥ずかしさで頬が熱い。彼の言葉は冗談だとは分かっているが、なんて返そうか戸惑ってしまう。
 すると、凌守さんはふふっと笑って曲げていた腰を伸ばした。

「人が増えてきましたね。次、行きましょうか」

 凌守さんが立ち上がる。彼が高身長で良かったと思ったが、それでも私は恥ずかしくてたまらない。
 私は俯いたまま、彼に手を引かれ水族館の奥へと移動した。
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