空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 私は凌守さんの手をぎゅっと握り、一歩づつ前へ出た。凌守さんも同じように、ゆっくりと水槽に近づいてくれる。

 大丈夫、大丈夫。
 言い聞かせながら、目の前に迫った水槽を見上げた。

 群れをなして泳ぐイワシ、その上の方でまばらに泳ぐマアジ。タイ、エイ、クエ、ホウボウ。東海林さんの市場で見たことのある魚たちが、悠々と泳いでいる。

「この水槽は、この辺りの湾を模して作られたそうです」

 凌守さんがそう言った。

「不思議です。当たり前なんですけど、水揚げされるお魚たちはこうして海の中で泳いでるんだなって、実感します」

 言いながら、彼の方を見た。彼は私を見ていたようで、目が合い微笑まれる。だけどすぐに、彼は大水槽へと視線を移した。
 私も水槽を見た。相変わらず、魚たちが泳ぎ回っている。

「海は命の根源ですから。奪うこともありますが、生まれる場所でもあるんです」
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