空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 ――奪うこともある。
 彼のその言葉に、思わず体が強張った。だけどすぐ、私は深呼吸をして、悠然と泳ぐ魚たちを見上げた。

 母は、父は、何かに生まれ変わったのかもしれない。
 父は奪う側だったかもしれないけれど、生まれ変わったのなら、母とともに何かを生み出すものになっていてほしいと思う。

「すみません」

 凌守さんは私の微細な変化を感じ取ったらしい。

「いえ。凌守さんは、海の中に潜ったりもするんですよね。こういう海の中の光景も、きっとよく見てらっしゃいますよね」

 私は平気だと伝えたくて、そんなことを口走る。すると、彼は顔を上げこちらを向き、苦笑いを浮かべる。

「確かに、海に潜ることは多々ありますが、こういうのんびりとした場はあまり見ないですね。救助に、必死なもので」

 言いながら、私とつないでいるのと反対の手を首元に当てる。
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