空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む

　言いながら、私は窓の外の海を見つめた。もう外は真っ暗だけれど、この辺りの明かりを反射した水面は穏やかに揺れ、輝いている。

「海花さんが少しずつ海を好きになってくれているのが、俺は嬉しいです」

　彼の言葉に、思わず彼の方を向く。彼は相変わらず、優しく微笑んでいた。

「再会した時も、このくらいの時間でしたね」

　彼が視線を海に戻したので、私も「はい」と返しながら海を見た。

　あの時は、目の前にある漆黒の海が、怖くて仕方なかった。だけど今、穏やかな気持ちで海を見下ろせるのは、凌守さんのおかげだ。
　あの時、彼が私に声をかけてくれて、本当に良かった。

「私、凌守さんに助けてもらってばかりですね」

　恥ずかしくて俯きがちに言う。だけど、凌守さんは窓の外の海を見たまま、何も言わない。だから私は、続けて口を開いた。