桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
この訳の分からない性教育をきっかけに、茉昼は何でも俺に話すようになった。
「女子ってさ、なんであんなグループで動きたがるのかな」
「先輩に色目使うなとか言われたんだけど。声かけてきたの向こうからなのに……」
クラスメートの女の子の話。
「女子より、男子のが楽。優しいし、単純だしさ~」
「ねぇ、終わったあと、構ってくれないの何で?」
「賢者タイムとか何?意味分かんなーい」
ころころと変わる男との、赤裸々な話。
「お兄ちゃんは、そんなことないよね?」
そして、俺に向けられる絶対的な安心感──。
成長するにつれて、茉昼の男関係のトラブルは増えていった。
茉昼は見た目も良くて、愛想もいい。よく笑うし、人懐っこい。
その上、男との距離感も近く、簡単に体を許してしまう。
都合のいい女。
だから男ウケは良かった。
その反面、同性の友達はほんの一握りだった。
***
「うぇっ、う……ぇぇん。お兄ちゃん、」
「茉昼?どうした?」
「なんで、✕✕くん……他に女の子、いた……」
「うん。今どこにいる?」
電話口から茉昼の震える声が聞こえてくると、俺は必ず迎えに行った。
茉昼はいつも膝を抱えて肩を震わせていて、小さな頃と変わらない涙を溢す。
真っ赤な目。腫れた瞼。鼻を啜る音。
両膝を抱えて、体を小さく丸めている。
背中に手を回して抱き締め、その小さな頭をゆっくり撫で下ろすと、強張っていた体の力が少しずつ抜けていくのが分かった。
「……ひどいよ、なんで?私なんでいつも本命じゃないんだろ……?」
「よしよし」
縋るように俺の服を掴む姿は、昔、公園で泣いていた頃と何も変わらなかった。