桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
それからしばらくの間、茉昼は落ちついているように見えた。
外で何があっても、家に帰ってくれば笑っている。 男関係のトラブルで泣きついてくることも減っていた。
一時期、不登校になっていた朝士も通信制高校へ通うようになり、少しずつスクーリングにも出席出来るようになった。 俺も大学卒業後に開始したキャンプ場の経営に慣れてきて、生活はようやく安定し始めていた。
そんな時だった──。
当時付き合っていた、5個年上の彼女から結婚の話をされた。
「そろそろ年齢的にも結婚したいんだけど、智夜はどう思ってる?」
「……うん、いいよ」
特別、結婚願望があったわけじゃない。
自分が家庭を持つ姿なんて想像できなかったし、正直あまり興味もなかった。
それでも、断る理由はなかったし。 彼女が望むならそういうものなのかもしれないと、深く考えないまま頷いた。
両親も、どこか安心したような顔をしていた。 俺たち兄妹に無関心だったくせに、世間体だけは気になるらしい。
俺の結婚に、1番動揺していたのは茉昼だった。
「え……そっか。お兄ちゃん、結婚するんだ」
笑っていたし、ちゃんと、「おめでとう」も言ってくれた。
だから最初は、ただのブラコンの延長なんだと思っていた。
だけど、その頃から茉昼はまた不安定になっていった。
男を取っ替え引っ替えするようになって、夜中に泣きながら電話をかけてくる回数も増えていく。
結局、結婚生活は長く続かなかった。
俺のマイペースな性格と、彼女の几帳面な性格は、思っていた以上に合わなかったのだ。
生活リズムも合わず、すれ違いばかりが増えていったし。それに、子供も出来なかった。
結局、離婚を切り出したのは彼女の方だった。
たった1年の結婚生活。
未だに俺には、何が駄目だったのかよく分からない。