桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
管理棟の前に建てたログハウスから、一緒に住んでいた彼女の荷物が無くなった。
ガランと静まり返った部屋を見回しながら、ここで1人暮らしか、とぼんやりと思う。
俺の元の部屋は朝士の部屋になっていたし、本宅へ戻るつもりはなかった。ここに生活出来る家もあることだし。
その代わりみたいに、今度は茉昼が頻繁にこの場所へ来るようになった。
「お兄ちゃーん!えへへ、きちゃった~!」
茉昼が、夜になるとふらりとやって来る。
顔を真っ赤にさせて酔っ払って上機嫌だったり、泣いていたり、怒っていたり。茉昼の状態は日によってかなり違っていた。
「部屋に帰るのが面倒くさーい」
「え~、1人じゃ寂しい」
「お兄ちゃんと寝るのがいいな」
その日によって理由は違うけれど、結局はそのまま俺のベッドで一緒に眠る。
不思議とは思わなかった。抵抗も無かった。
やっぱり茉昼は、俺がいないと駄目なんだろうな、と思うだけ。
茉昼とはじめてキスをしたのは、いつだっただろうか──。
きっかけははっきりとは覚えていない。お互い酔っぱらっていたから。
真昼が激しく泣きわめいていた事だけは、妙に印象にのこっている。
「……ひっく、なんで、私が浮気される側なのに私が悪いことになってるの?汚いとか、アバズレとか……なんで私ばっかり………」
「茉昼落ち着いて、茉昼は汚くないよ」
「……お、お兄ちゃ……う、うぇ……ほんと?」
子供の頃から知っている。潤いをもった大きな瞳がじっと俺を見据えるから、そこから目をそらすことが出来なかった。
どちらから近付いたのか分からない。
湿った唇が離れると、あれだけ騒いでいた 茉昼がスンと静かになった。
それから何日かはフツウの兄妹として過ごしたと思う。
でも、1度掛け違えた距離感は、もう元には戻らなかった。
抱き締めるのは当たり前。 軽いキスも、挨拶みたいになっていく──。
少しずつ、ゆっくりと。
俺たちの距離は、おかしくなっていったんだ。