桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「それはっ──…、」
──すみませーん、うちの柊が何かしましたか?
──
はじめて智夜さんと会ったとき、年上の……凄く優しそうな人だと思った。
──だって私分かるもん。凄く分かる。
誰も知らない遠くに行きたい、逃げ出したい気持ち……──
茉昼ちゃんだって、私が泣き出してしまった時、あんなに親身になって話を聞いてくれた。
「……それは、契約で……。私が、あの場所から逃げ出したくて、智夜さんが両親がうるさいからって……」
とここまで言いかけて、両親が"うるさい"と言ったのは、茉昼ちゃんだったと気がついた。
あれ、茉昼ちゃんのため──?
なんで……?智夜さんは好きな人がいると言ってたのに、乗り気じゃなかったの?茉昼ちゃんの事が"好き"なんだよね?
思考がまとまらなくなって、頭が混乱していく。
「あ、あれ?……あ、朝士くんはどう思うの?普通、自分のお兄さんとお姉さんがさ、そういう関係って──おかしくない?倫理的にも………、」
──智夜が作ってくれたんだ、俺の居場所!
ツリーハウスを見せてくれた朝士くんが、両手を広げて嬉しそうに笑って教えてくれたのに。
「き、気持ち悪いと思うよね?」
言葉が止まらなかった。
朝士くんが2人の事を"気持ち悪い"なんて、思うわけがないのに。
ちゃんと考えれば分かる筈なのに。
「あ?……気持ち悪いってなんだよ?」
目の前の朝士くんの表情が一気につり上がったのを見て"しまった"と、そう思ったけどもう遅い。
「ふざけんなよ。俺にとって、智夜は大事な存在なんだけど……」
「……っ、」
「ムカつく……」
静かに絞り出される言葉。はじめて見る朝士くんの顔に、思わず少し後ずさる。
「そーだ、彩里がさ、智夜と茉昼に嫌悪感みたいなの感じるならさ」
小さな空間に、張り詰めた空気が走る。
朝士くんが怒っているのが、痛いほど伝わってきた。
「彩里も同じことすればいいじゃねーか」
まるで金縛りにあったように、動くことができない。
「彩里の倫理観。義理の弟とヤったらさ、どうなんだ?」