桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~



「朝士、茉昼が展望台の方に回ってる」

「じゃあ、俺は川の方へ行く」

「うん、彩里ちゃんは茉昼と合流して。俺は裏山を探すから!」


3人共その場から走り出そうとした、その時──。
"ブーブー"と、スマホの振動音が響いた。


智夜さんがポケットからスマホを取り出し、耳に当てる。



「……茉昼?」

何を話しているのか内容までは聞き取れない。
けど、電話の向こうから聞こえてくる茉昼ちゃんの取り乱した声に、思わず息を呑んだ。



「茉昼、落ち着いて!え……!?」

智夜さんの表情が、一気に険しくなる。

「おい、智夜! 茉昼、何て?」

「柊、見つかったって。分かった、すぐ行く!」

智夜さんはスマホをスピーカーに切り替え、そのまま駆け出した。
その後を朝士くんがついて、私も遅れないよう慌てて走り出す。



『展望台の裏で、滑ったみたいで……っ! どこか打ったのか、ずっと泣いてるの……!』

『うぇぇぇん……っ、ぅ、ぅぅ……!』


茉昼ちゃんの必死な声と、柊くんの泣き声がスマホ越しに響く。


『急いで下りたんだけど……っ、痛……! わ、私、動けなくなっちゃって……!』

「動けないって?」

「茉昼! どういうことだ!?」

智夜さんと朝士くんが大きな声を上げた瞬間、柊くんの泣き声がさらに大きくなった。



え、何?どういう状況なの──?


キャンプサイトの端の砂利道を抜け、川にかかった橋を渡る。
その先に、展望台へ続く坂道が見えてきた。

はぁはぁ、と息が切れる。
2人に離されないように必死に走った。

一気に坂道を上がると、古い木製の柵がたっていて、その下方に広がっていたのは、岩がむき出しになった急な斜面だ。

その斜面の下に茉昼ちゃんと柊くんの姿が見えた。と同時に、柊くんの泣き声が鮮明に聞こえてくる。


「茉昼!!今行くから!」


智夜さんが下へ降りるルートへ回ろうとした、その時──。



「そんなの待ってられるか!」

朝士くんが柵を乗り越えて、そのまま足を踏み出した。


< 116 / 148 >

この作品をシェア

pagetop