桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「朝士、茉昼が展望台の方に回ってる」
「じゃあ、俺は川の方へ行く」
「うん、彩里ちゃんは茉昼と合流して。俺は裏山を探すから!」
3人共その場から走り出そうとした、その時──。
"ブーブー"と、スマホの振動音が響いた。
智夜さんがポケットからスマホを取り出し、耳に当てる。
「……茉昼?」
何を話しているのか内容までは聞き取れない。
けど、電話の向こうから聞こえてくる茉昼ちゃんの取り乱した声に、思わず息を呑んだ。
「茉昼、落ち着いて!え……!?」
智夜さんの表情が、一気に険しくなる。
「おい、智夜! 茉昼、何て?」
「柊、見つかったって。分かった、すぐ行く!」
智夜さんはスマホをスピーカーに切り替え、そのまま駆け出した。
その後を朝士くんがついて、私も遅れないよう慌てて走り出す。
『展望台の裏で、滑ったみたいで……っ! どこか打ったのか、ずっと泣いてるの……!』
『うぇぇぇん……っ、ぅ、ぅぅ……!』
茉昼ちゃんの必死な声と、柊くんの泣き声がスマホ越しに響く。
『急いで下りたんだけど……っ、痛……! わ、私、動けなくなっちゃって……!』
「動けないって?」
「茉昼! どういうことだ!?」
智夜さんと朝士くんが大きな声を上げた瞬間、柊くんの泣き声がさらに大きくなった。
え、何?どういう状況なの──?
キャンプサイトの端の砂利道を抜け、川にかかった橋を渡る。
その先に、展望台へ続く坂道が見えてきた。
はぁはぁ、と息が切れる。
2人に離されないように必死に走った。
一気に坂道を上がると、古い木製の柵がたっていて、その下方に広がっていたのは、岩がむき出しになった急な斜面だ。
その斜面の下に茉昼ちゃんと柊くんの姿が見えた。と同時に、柊くんの泣き声が鮮明に聞こえてくる。
「茉昼!!今行くから!」
智夜さんが下へ降りるルートへ回ろうとした、その時──。
「そんなの待ってられるか!」
朝士くんが柵を乗り越えて、そのまま足を踏み出した。