桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「朝士!!」
「朝士くん……!」
私と智夜さんの声が同時に響いた。
朝士くんは迷うことなく、凹凸の激しい岩場の傾斜を勢いよく滑り下りていく。
こ、こんな高さから──?
血の気が引いて、思わず両手を口元に当てた。
途中で、木の枝や尖った岩にぶつかりながら、朝士くんが茉昼ちゃんと柊くんが座り込む場所に辿り着く。
「彩里ちゃん、こっち」
「あ、……はい」
智夜さんが私に声をかけ、斜面を迂回するよう走り出すから。私も、置いていかれないよう震える足をとにかく前に出した。
「茉昼、柊!!」
ぐるりと回って、やっと3人のいる場所に辿り着く。
「……お、おにいちゃぁ……ん!うぇっ、ううう……」
柊くんの事を抱き締めたまま、茉昼ちゃんが涙をボロボロこぼして泣いている。
「柊は?」
「泣き疲れて寝たっぽい。とりあえず、息はしてる」
「どこか打ってるかもしれないから病院へ……茉昼は?」
「足がヤバい。めちゃくちゃ、腫れてる」
ぐしゃぐしゃに泣きじゃくる茉昼ちゃんの代わりに、朝士くんが返事をする。
すぐ側で流れている川で濡らしたのか、足首に濡れた朝士くんのシャツが乗せられていた。
智夜さんが茉昼ちゃんの右足に触れると、
「痛っ、!!」
茉昼ちゃんが叫ぶように声を上げるから、朝士くんが柊くんを抱き上げる。
「柊、危ない目に合わせて、ごめんね、ごめんねぇ……」
「大丈夫。大丈夫だから」
智夜さんが茉昼ちゃんの背中を上下にさすってから、静かに背中を向ける。
「ほら」
「……っ、うっ、うう…」
茉昼ちゃんが、しゃくり上がるよう声を出しながら、その大きな背中に手を伸ばした。