桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「え、なんて?」
「茉昼は軽い捻挫だって。柊もレントゲン異常なし。吐いたりもしてないから、一晩様子見らしい」
朝士くんが、私にスマホ画面を見せながら言葉を続けていく。
そこには、智夜さんからのメッセージが表示されていた。
「2人とも、命に別状なしだと!」
「本当に……無事で良かった」
その画面も見て、一気にヘナヘナと力が抜けていく。
「な?良かったな!」
「……もう、朝士くんもだからね」
「……は?」
「自分だって傷だらけのくせに。本当に……し、死んじゃうかと思ったんだから」
「なんだよ、大袈裟だなー」
こっちの気も知らないで……。
「朝士くんといると心臓いくつあっても足りない……」
「はははー、それ智夜にもよく言われる!」
能天気に笑うから、こっちの身にもなってよ、と思わずにはいられない。
「笑い事じゃないんだけど!あー、もう!智夜さんの気持ち分かる……こんな弟いたら、心配で心配でたまらない気が気じゃないよ」
「別に俺の勝手だろ~」
「周りの人のことも考えてよ。朝士くんのこと、みんな好きなんだから」
そう言った瞬間──。朝士くんが、ぴたりと動きを止めて私にジッと目を向けて口を開いた。
「……みんなって?」
「智夜さんと柊くん、あと茉昼ちゃんとか」
「彩里も俺のこと好き?」
「す……、好きだよ」
思わず答えてしまってから、はっとする。
な、なんでこんなこと言わされてるのか──。
自分の顔がボッと赤くなって、熱をもっていくのが分かる。
「彩里は俺のことが好き~」
「は?それはっ、別に家族としてでしょ?」
「うん、それでもじゅーぶん嬉しい」
朝士くんがフッと目を細めて柔らかい笑顔を見せる。
「子供のくせに……」
「子供じゃねーよ!20歳だし!」
「子供だよ!朝士くんなて子供だよ!だから……、っ、大人っぽく笑うのやめてほしい」
「なんだそれ?」
心臓の音がやけにうるさい。胸のあたりがぐしゃぐしゃに掻き立てられるようだ。
「わ、分かんない……けど」
自身の声がどんどん小さくなって、落ち着かない状態の中──、
「彩里ちゃん、戻ってるかしら?」
玄関の扉がガチャリと開いて、お義母さんが顔を出した。