桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
13.イマノフタリゴト
義母が帰った後、私と朝士くんの2人が家に残される。と同時に、どっと波のように疲れがきて、ソファにずしんと沈み込むように腰をおろした。
「彩里、かっこよかったな!」
朝士くんが目をキラキラとさせる。
「そんなことないよ。ただ、茉昼ちゃんや柊くんのこと、あれ以上なにも言われたくなかっただけだし……」
けど、そう言いながらも、体が少し震えていた。
お義母さんの圧が凄くて、やっぱり少し怖かったし。自分の腕を両手でぎゅっと掴んだ。
頭の中に思い出すのは、柊くんのことをすごく心配して泣いていた茉昼ちゃんの姿。
茉昼ちゃんは、あんなに柊くんのこと大切にしてるのに──。
お義母さんは、なんであんな他人事のようにひどい事を言えるんだろう。
「なぁー、彩里、さっきの本気か?」
朝士くんがそう言って、すぐ隣にボスンとソファへ倒れ込むように浅く座り、下から覗き込んでくる。
「さっきのって?」
「離婚しませんってやつ」
あの時は、売り言葉に買い言葉だった。
テーブルの上の用紙に目を向ける。
昨日、朝士くんと役所に取りに行って、勢いで書いてしまった離婚届。
本気で出すつもりだったかは、自分でもよく分からないけど。
「うん、しない」
「智夜のこと、好きだから?」
「それもあるかもしれないけど……、ここにいたいからかな」
「ふーん」
「私、この家が好きだし」
「……」
「茉昼ちゃんも柊くんも、智夜さんも……」
朝士くんが、じっと私に向けるから。思わずパッと視線を反らして、早口で言葉を続ける。
「朝士くんもいるし」
「はぁーーー、そっか。そっかぁ……」
朝士くんが大きな息を吐いて、ずるずると体勢を変える。そして、足を肘掛けに投げ出して寝転がっていくから、彼の髪の毛が太ももの部分に当たって、ちょっとくすぐったい。
相変わらず、距離が近いな……。
「朝士くんも言ってたじゃない。結婚も離婚も簡単にできるって。実際あんな紙切れ1枚なんだよ」
「言ったけどさぁー」
「大切なのはさ、この紙切れ1枚より、誰と一緒にいたいかじゃないかな」
「俺は彩里といたい」
「なっ……、もうっ、うるさいなぁ!」
思わずそう返してから、少し気まずい空気が流れる。
「……あ、朝士くんだって、みんなと一緒にいたいでしょ?」