桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「まぁ、そうだけどさぁ」
朝士くんが不満そうに頬を膨らませる。
なんだか気まずくなって、私は話題を変えるように口を開いた。
「あ……ねぇ、朝士くんお腹減らない?私たち今日また何も食べてないよ」
「減った~」
「あはっ、あはは、もう何やってんだろうね。何か食べよっか?」
「お、彩里。何か作ってくれんの?」
ソファに寝転んでいた朝士くんが、上半身を起こし身を前に乗り出してくる。
その顔が期待に満ちたものだったから、ちょっと申し訳ないと思いつつ視線をそらした。
「……カ、カップラーメンでいい?」
「……なんでカップ麺なんだよ?」
「今からお湯沸かすから」
「智夜にさー、彩里ちゃんが和食作ってくれてさ~っ散々言われてんだけど!智夜だけズルい!」
「えー、そんな駄々こねられても」
「駄々じゃねーし、俺食ったことねーし」
「でも今日は疲れちゃった」
「じゃぁ今度作れよ」
「うーん、朝士くん何が好きなの?」
「……彩里の味噌汁がのみたい」
なんて、少し拗ねたように頬を膨らませるから、そんな朝士くんを見て、思わず自然と頬を緩む。
「ふふっ、気が向いたらね」
「なんだそれ、約束だからな!」
それから、2人でカップラーメンを食べた。
ずるずると麺をすすりながら、たわいない話をした。 ふと会話が途切れて、静かな時間が流れていく。
昨日から色々あったけど、なんだかいま不思議と平和だな……。
食べ終わったカップをテーブルに置いて、朝士くんが大きく伸びをする。
「はー、食った食った」
「カップ麺なのに満足そうだね」
「腹減ってたからな」
窓の外を見ると夕日が落ちて、暗くなりはじめていた。
「そろそろ戻ったら?」
「んー。昨日からシャワー浴びてないし、帰ったら風呂かな」
「朝士くん、お風呂しみそうだね」
一応、手当てはしたものの、腕や足、顔に残る痛々しい内出血や切り傷に目がいってしまう。
防水の絆創膏にしたけど、ぬるま湯でもしみるだろな。
「じゃあさー、彩里手伝ってよ」
「は?無理。大人なんでしょ?自分でやって」
「えー、俺、怪我人!」
「俺が手伝ってやろうか?」