桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……」
カタン、とテーブルにマグカップが2つ置かれて、向かいの席に智夜さんも腰を下ろした。
そして、静かに口を開く。
「ごめんね。彩里ちゃんが家を出たの、途中まで気付かなかったんだ」
「いえ。私も智夜さんからのメッセージ見ませんでしたし……見るのが怖くて」
「俺のせいだよね」
智夜さんの小さく呟くような声に、私は首を横に振る。
「それで、あの、帰ってきた時に……お義母さんに見られちゃって。ちょっとマズかったかなーなんて」
「朝士と……?」
「はい。それと、お義母さん……茉昼ちゃん達が大変なのに大袈裟だって言われて、びっくりしました」
マグカップの取ってをぐっと握る。
「うん。ああいう人なんだ……。昔から」
「でも、怪我して病院に運ばれたのに…」
「悪気があるわけじゃないんだ」
私の台詞に、智夜さんがお義母さんを庇うから驚いた。
「視野が狭いというか、不器用というか……。仕事なら仕事だけになるんだ、同時に色々できない人だから」
眉を下げて、少し寂しそうに苦笑いを見せる智夜さんがいて、複雑な気持ちになる。
家族の形はそれぞれあるのだろうけど。
でも、私が本当に確認したいことは、そのことじゃなかった。
「そう、なんですね。それと……前の奥さんの話も少ししてて」
「うん。なんて?」
「茉昼ちゃんのせいで別れたって」
「……え?」
智夜さんの目が見開き、驚いたように固まった。
「茉昼ちゃんがいるから、智夜さんの結婚がうまくいかないんじゃないかって」
実際に彼の前で言葉にすると、胸の奥が少し痛む。
「母さんが、そう言ってたの?」
「はい、前の奥さんが茉昼ちゃんのことも原因の1つだって言ってたって」
「そうか……」
彼が大きな息を吐いて、右手で顔を覆う仕草を見せる。
「あと……柊くんのお父さんのことも聞かれて」
「俺が父親なんじゃないかって言ってた?」