桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~




智夜さんが、朝士くんが、そして茉昼ちゃんも。
お互いの存在を、家族を大切にしていることは知っている。

短い期間だけど、一緒に過ごしてきて、それは十分伝わっていた。


「──茉昼にも、ずっと笑っててほしい」

「……そ、うなんですね」

(ぬる)くなったコーヒーを口に運び。静かに、ゆっくりと息を吐いてから口を開いた。


「……なんで、……とき」

「え?」

「なんで、あの時……。私に持ち掛けたんですか?」


はじまりは柊くんだった。
小さな男の子が私にぶつかってきたのが、私たちの出会いのきっかけ。



「公園ではじめて会った相手に、契約結婚の話を……」



───仕事先も見付かって、住むところも確保できて、望み通り遠くに行ける──


──それに、お互いの親も安心させられる。これってお互いに利益あると思いません?───


「茉昼ちゃんが言ってましたよね。親がうるさいからって」

そう、最初に契約結婚の話を出したのは茉昼ちゃんだった。


「茉昼、あいつも気付いてたんだ。親に色々言われてること」

「……」

「俺が相手を見つければ……、少しは平和になるんじゃないかって思ったみたいでさ。単純だよな。そんな簡単な問題じゃないのに」

なんて智夜さんが苦笑するけど。最初から分かっていた。お互いに利益があると言われていた筈なのに──。
結局は合意の元とはいえ、私と智夜さんの結婚はカモフラージュに利用されたんだよね。
テーブルの上で両手をぐっと握り、全身が震える。



「茉昼ってさ、子供の頃から泣き虫でさ」

「え……?」

智夜さんが視線を遠くに向けて、静かに話し出すから思わず顔を上げた。



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