桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「智夜さんのそういう行動って、相手を勘違いさせますよ」
「え?」
智夜さんが目をキョトンとさせる。 本人、意識してるわけじゃないから気付かないんだろうな。
──俺、好きな人がいるんだ──
「いえ、智夜さんの秘密……お墓まで持っていきます」
「えー、彩里ちゃん?お墓までって重くない?」
「私たち、運命共同体ですからね!」
「運命共同体?」
「はい。良いことも、悪いことも、どんな秘密も一緒に背負う関係ってことです」
「うわ、なんか凄い関係だね」
「そこは、ほら……契約結婚ですし」
「なるほど」
智夜さんが、目を細めて笑い声をあげるから、今まで張り詰めていた空気が柔らかいものになっていく中──。
「で、なにこれ?」
ふと、彼がテーブルの端に置いてある封筒に目を向け、中身を確認していく。
「あっ、それは、昨日……」
「あー、だから役所行ってたのか」
「昨日はごめんなさい、私、混乱しちゃって」
「いや、俺のほうこそごめん。色んな事情に巻き込んじゃったよね」
「いえ」
「で、なんで婚姻届もあるの?しかも、朝士の名前書いてあるし」
「それは、ノリらしいですよ」
「はぁーー、あいつはもうなんなんだ。結婚とか、一体何を考えてるんだよ」
「何も考えてないと思いますよ」
「それはそれで困るよね」
「でも、優しいですよ」
「はは、俺もそう思う」
お互いの笑い声が重なり合って、静かに、ゆっくりと、穏やかな時間が過ぎていく。
私たちはお互いの秘密を共有した。
きっと、それは、これからも続いていくだろう。
「あの……、ちゃんと話してくれてありがとうございました」
「いや、重い話で本当にごめんね」
「お互いさま、ですよね……?」
「はは、彩里ちゃんとは、違う形で出会いたかったな」
「……え?」
「いや、うん、なんでもない。じゃぁ、俺、今日は管理棟の方で寝るね」
「はい」
智夜さんが管理棟へ向かい、1人残される。
この家で夜を1人で過ごすのはいつものことだ。
いつもの事なのに──。 急に寂しくなるから意味が分からない。
大きなベッドの上に横になった。そして、今日は本当に色々なことがあったな……なんて、ぼんやりと木目の天井に目を向けた。
なんでだろう──。
涙が静かに頬を伝うから、右手で拭う。
「なんで、泣いてるんだろ……」
自分でもよく分からないまま、静かに夜が過ぎていった。