桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「たいまー!」
足を怪我している茉昼ちゃんの代わりに荷物を運ぶため、私も本宅の中へ入る。
土間から廊下へ上がると、相変わらず荷物があちこちに置かれている状態だった。
「散らかってるけど気にしないでね」
「あ、うん。前に来たことあるから」
「え? そうなの?」
茉昼ちゃんが不思議そうに首を傾げた、その時――。
「あしゃー!」
柊くんが嬉しそうに走り出した。
奥の右側の朝士くんの部屋を勢いよく開ける。そして、そのまま迷いなく中へ駆け込んだ。
「柊ー、朝士は学校だって」
「えー!ももー?」
バン!バン!バシャン!!
何かを叩く音に混じって水の音まで聞こえてくるから、ぎょっとして慌てて後を追う。
「ちょっと、柊くん!水槽はまずいよ!!」
「しゃー!!」
「優しく、優しく、ね?」
「きゃはははは!」
水槽の前ではしゃぐ柊くんを後ろから抱っこして引き離す、と同時にふと頭に過る。
別に、たかが朝士くんの部屋だけど。
本人がいないところで、勝手に入っちゃって良かったのかな。
前に入った時と、同じ位置に敷かれた布団。
その側には、パジャマが無造作に脱ぎ捨てられている。
「あしゃ、いなーい」
「朝士くん学校だって」
「いなーい、しゃみしー」
「うん?……うん、寂しいね」
「ねー」
「昨日、朝士くん、柊くんのこと助けてくれたもんね。凄かったね!」
「あしゃ、ヒーロー」
なんて、柊くんが戦隊ヒーローみたいに両手をポーズ取るから思わず笑ってしまった。
けど、朝士くん、怪我……大丈夫だったかな。
ケロッとはしていたけど、結構ひどい傷だったし。
「あっ、柊くん!ストップ!」
「きゃきゃきゃー!!」
しまった!!
柊くんが私の隙を狙って、モモの餌の袋を水槽の中へ逆さまにしてしまった次の瞬間──、
「まったく、また迷惑をかけて」
「別に、お母さんに迷惑かけてないでしょ?」
部屋の外から言い合う声が聞こえてきた。