桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「茉昼ちゃん大丈夫?」
「痛……いたたた……」
私の肩に掴まりながら、茉昼ちゃんがひょこひょこと足を運ぶ。その少し前を、朝士くんが柊くんを肩車しながら歩く。
「彩里ちゃん、変なところ見せてごめんね」
茉昼ちゃんが大きく息を吐き、俯いたまま口を開いた。
「大丈夫だよ。……ね、いつも、あんな感じなの?」
「うん、そうー。私が見てないところで、お兄ちゃんも責められてるみたい」
「そうなんだ……」
「この際、嘘でも"俺が父親だ"って奴が出てくればいいんだけどなー」
前を歩いていた筈の朝士くんが、立ち止まって振り返る。
「そんな軽々しく言わないでよ。そんな人いるワケないでしょ」
茉昼ちゃんがムッと口を開くと、朝士くんがきょとんとした顔を見せた。
「智夜と彩里だって嘘なのに?」
「あんたねぇ、それ外で言わないでよ!」
「けっこん、うしょー?」
「う、嘘じゃないよ!本当だよ」
柊くんの台詞にぎょっとして。咄嗟に出た言葉は、柊くんに嘘をついたことになるのだろうか。
……いや、書類上は本当なんだから、セーフかな?
ふと昨日の智夜さんとの会話を思い出す。
──茉昼にも、ずっと笑っててほしい──
柊くんが「きゃはははは」と笑い声をあげ、無邪気に朝士くんの頭にしがみついている。
茉昼ちゃんが少し寂しそうに笑みを浮かべていた。
「で、彩里。なんで俺の部屋から出てきたんだ?」
「別にいーじゃん、朝士くんの部屋なんて」
「なんだよ。彩里の部屋、勝手に入っていいのかよ」
「それはだめ!」
朝士くんとそんなやり取りをしていると、茉昼ちゃんが面白そうに間に入ってきた。
「えー、2人どうなってるの? キスしたとか言ってたけど」
「きしゅー?」
「ちょっと、柊くんいるし」
「きしゅー? ちゅー?」
「そうそう、ちゅーのこと」
「しゃいり、しゅき、」
次の瞬間、朝士くんの肩からズルズルと降りた柊くんが、私のホッペに軽いキスを1つ落とす。
「ちゅー」
「おい、柊! 何やってんだよ」
「あはは!ウケる!! 何? 朝士が無理やりしたやつ。 1回だけ?」
「ちょっ……」
「2回……した。いや、あれ?違うな…… 回数でいうと……」
「やめてよ!数えなくていいから!!」
朝士くんが頬を赤くしながら正直に答えるから、こっちまで恥ずかしくなってしまう。