桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「茉昼、柊! おかえり」
本宅から自宅へ戻ると、ちょうど客対応を終えた智夜さんが顔を出した。
「あ、お兄ちゃん」
「ともちゃ!」
「智夜、おせーよ」
「しょうがないだろ。客対応してたんだから」
眉をしかめるる士くんに苦笑いを見せてから、智夜さんが私へと視線を向ける。
「彩里ちゃん、迎えありがとうね」
「いえ……」
「はは、朝士じゃなくて本当に良かったよ」
「おいっ、それどういう意味だよ!?」
朝士くんが抗議の声をあげるから、茉昼ちゃんと私は思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
その日の夜──。
夕食とお風呂を済ませた柊くんが、眠そうに目をこすり始めた頃だった。
「彩里ちゃん……今日、こっち泊まっていい?」
茉昼ちゃんが、ぽつりと口にする。
洗い物をしている智夜さんの方をちらりと見て、様子をうかがっているようだった。
まるで、小さな子が親の顔色を確認するみたい。
「お母さん、まだ怒ってそうだし」
「……うん、いいよ」
そう答えると、茉昼ちゃんが安心したようにほっと息を吐いた。
「柊、今日はここにお泊まりだよ!」
「おとまいー?」
「ここで寝るの!みんなで」
「しゃー、おとまいー!!」
茉昼ちゃんが柊くんに説明をすると、柊くんの目がキラキラと輝き出すから。
また、眠気が飛んでしまったんじゃないかと、心配になる。
「は?じゃぁ、俺も泊まる!」
「えー、朝士も?朝士は帰れば?」
「やだよ!俺だけ仲間外れにするのかよ!」
「みんな、いっしょー、おとまいー!」
「ん?柊、どうした?」
丁度、洗い物が終わった智夜さんがキッチンから戻ってきて、柊くんの頭にポンと手を乗せてからソファへ腰を下ろす。
「あ、皆ここに泊まりたいって……」
「なるほどね」
茉昼ちゃんと朝士くんが言い合いをしている姿に目を向けて、智夜さんがクククッと子供みたいな笑顔を見せる。
「彩里ちゃんがいいなら──」
「ふふっ、いいに決まってるじゃないですか」
結局、その夜はリビングにシュラフを並べて、みんなで一緒に寝ることとなった。