桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
あの日、ゆうかから連絡がきたあの夜──。
『あのクズ再婚するの知ってる?むかつく』
『マジでありえない』
スマホ画面に表示されるメッセージ。
ゆうかがあまりにも怒っていると伝わってくるから、まさかと思って彼のSNSを覗いた。
「えっ??」
「どうした?」
隣に腰を下ろす朝士くんが、私のスマホ画面を覗き込む。
そこには、『パパになりまーす』という文字と、笑顔で手でハートを作る男女の写真が投稿されていた。
……相変わらず、デリカシーのかけらもない。
これは、ゆうかが怒るのも無理もない。
「あ、こいつ、あれじゃん。和生。彩里の元旦那の」
SNSなんて不特定多数の人に見られるものなのに。まぁ、他人になった私には関係ないものなのだろうけど。
「こいつ結婚すんのか?パパだってことは子供が出来たのか…あっ、」
最後まで言ってしまってから、朝士くんが口元に右手を当て"しまった"という顔で私を見る。
「はぁ……、デリカシー0。昔からこういう人だった」
「まぁ、元気だせよ!」
朝士くんが私の背中を遠慮なくバンバンと叩く。
……あなたこそ、結構デリカシーないけどね。
「ねぇ、朝士くん──、昼間に言ってたこと覚えてる?」
「ん?」
「誰か柊くんの父親役になってくれればってやつ」
──この際、嘘でも"俺が父親だ"って奴が出てくればいいんだけどな──
「あー……、まぁ、たとえばの話だろ」
朝士くんが、ぼんやりと思い出したように顔を夜空に向けた。
「和生に頼んでみようかな」
「は?」
「父親役やって貰えないか」
「冗談だろ?」
朝士くんは目を丸くしたまま、驚いたように目をパチパチとさせる。
そんな朝士くんをよそに、スマホをタップして音声通話ボタンを押した。