桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「もしもし、久し振り」
『は?どうしたんだよ、こんな夜中に』
久し振りに聞いた和生の声は、気のせいか慌てていた。 ヒソヒソ話しているような、小さな声のトーンだった。
その後すぐに、カラカラと音がしたから、窓から外にでも出たのだろうか。
「結婚とパパおめでとう」
『な、なんで知って……』
「それはこっちの台詞だよ。なんでこんなすぐ分かるようにSNSに載せるかな」
『お前俺のSNSチェックしてるなんて、まさか俺に未練……』
「あるわけないでしょ?ゆうかが知らせてきたの。あのクズムカつくって!」
『ゆうかって、あぁ…お前の友達だったよな』
「なぁ、彩里。マジでコイツに頼む…んぐっ、」
すぐ横から朝士くんが口を開くから、慌て口を閉じさせた。
『誰かいんの?』
「義理の弟がちょっと」
『こんな夜中に義理の弟と一緒にいんの?』
「あー、うん。ちょっとね。で、連絡したのはお願いがあってなんだけど」
和生の意見はごもっともだと思う……。
左手でスマホを持って、右手で朝士くんの口元を押さえて、朝士くんが体をバタバタとさせている。
『お願い?』
「この前、こっち来たとき、何かあったら頼れって言ってくれたじゃん」
『いや言ったけどさ、こんな夜中に元嫁から電話とかさ。疑われるだろ?』
あぁ、そっか。 隣には、新しい奥さんがいたんだ。 私に新しい生活がはじまっているように、彼にも新しい生活がスタートしているのだ。
ショックを受けたわけじゃないけど、複雑な気持ちになるのはなぜだろうか。
「おめでとうパパ」
『それ言われると辛い』
「私のがもっと辛い」
『……で、なんだよお願いって』