桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「ねぇ、茉昼ちゃん。明日の病院なんだけど何時予約だっけ?」
「えっとー、10時かな」
「じゃぁ、9時半出発ね」
「りょーかい!」
「待て待て、話をすり替えるな!彩里ちゃんも彩里ちゃんだ!なんでこんな危ないことを……」
ここまで言いかけて、智夜さんが右手で自身の顔を覆って、大きな溜め息を吐く。
「……はぁ、ついていい嘘と、悪い嘘があるだろ?」
「それ智夜さんが言います?私たち嘘だらけじゃないですか」
なんてニッコリと笑って見せると、茉昼ちゃんが「そうだよねー」と笑い声を上げる。
「女って怖い」
智夜さんがボソッとそう口にしたのが聞こえてきて、また、茉昼ちゃんと顔を合わせて笑った。
「上手くいったのか?」
「たいまー!!」
バタンと勢いよく玄関が開いて、ドカドカと入ってきたのは朝士くんと柊くんだ。 どっかで遊んできたのか、2人共泥だらけになっている。
「ちょっと、汚いんだけど!どこで遊べばこんなになるのよ?」
「森の中~すっげー秘密基地見付けたんだよな!」
「しゃー!!」
「もー危険な場所教えないでよね!」
茉昼ちゃんが朝士くんに向かって唇を尖らせる。まぁ、あんな事故があったばかりだもんね。心配になる気持ちも分かる。
でも、話し合いの場……本宅から柊くんを遠ざけてくれてたのは朝士くんなわけで。この2人の信頼関係があるからこそ、成り立つ会話なんだろうな。 なんて、羨ましくも思う。
「朝士も知ってたの?」
智夜さんが柊くんの汚れた洋服を脱がしながら、目を丸くして口を開く。
「絶対、顔出すなって言われてた。茉昼と彩里に。俺がいるとばれるからさ」
「一体、なんなんだよ、お前ら。それにしてもだ。父親の認知と養育費の件はどうなってるんだ?」
「それも嘘~」
「え?どうするんだよ、それ」
「えへへー」
「笑って誤魔化すな!」
「お兄ちゃんよろしく~」
「あー、もう!早く働けよ!ったく、みんなで稼がなきゃだな」
眉を下げて、少し困ったような顔を見せた智夜さんの表情が、どこか楽しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「じゃー、まずあのカフェを完成させなきゃだな!」
朝士くんがそう言うと、茉昼ちゃんが口を開く。
「朝士、頑張ってね」
「は?お前もだろ?」
「しゃーー!!」