桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~



「智夜さん!?」

「むぐ、むぐぐぐぐ…」

いつの間に来たのだろうか。
目の前には、朝士くんの口を塞いだ智夜さんの姿があった。



「ったく、お前はすぐ彩里ちゃんの隙につけ込もうとして」

「んぐぐっ……、離せよ!」

「はぁ。良かったよ、すぐ様子見に来て」

智夜さんが、手をバタつかせて暴れる朝士くんを軽々と押さえ込んで、呆れたように声を出してから私に視線をうつす。



「彩里ちゃんも、朝士が近付いてきたら突き飛ばしていいからね」

「あ、はい。あはは……」

私、智夜さんに軽い女とか流されやすいって思われてるのかな。なんて、一気に恥ずかしくなってくる。

確かに、彼が止めなかったらまた朝士くんに勝手にキスされてたかもしれないけど──。




「なんだよ、智夜の奴。いーとこ邪魔しやがって」

「ありがとうございます。助かりました……」

「いつでも呼んでね」

「彩里まで!ひでー!」

朝士くんが大きな声をあげると、新しく出来たこの空間の中に笑い声が響き渡る。




「まぁ、俺だけじゃなくて智夜も一緒に作ったんだけどなー」

「え……、そうなんですか?」

「これだけ規模が大きい工事だったんだからね」

目をパチパチとさせながら智夜さんを見ると、少しバツの悪そうな表情をみせる彼がいた。その時、外から声が聞こえて──。




「あー、やっぱりここにいた!」

「たいまー」


「茉昼ちゃん!?」

入口から茉昼ちゃんと柊くんがバタバタと入ってきた。保育園の見学から帰ってきたんだ。




「しゃいりー!!」


柊くんが嬉しそうに飛び付いてきて、ケラケラと楽しそうに笑い声を上げるから、思わずこっちまで笑顔になる。

改めて周りを見回した。
出来立てのテーブルと椅子。塗り立てのペンキの匂いが残るこの場所で、これからここがカフェとしてオープンするんだ。


茉昼ちゃんと、一緒にここで──。



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