桐田家のヒミツゴト(旧:合法浮気)
昨日、結婚式ではじてめて顔を合わせたけど、忙しいこともあって一言も話さなかった弟くん。
短髪の黒い髪。智夜さんの影から見え隠れする、まだ幼さの残る顔立ち。
智夜さん曰く極度の人見知りらしいけど。さっきから「だって」「でも」を繰り返している。オドオドした自信のない表情がよりあどけなさを感じさせてる。
そういえば、まだ大学生とかって言ってたっけ。
「…………あ、あの……ご、ごめんなさい」
「えっ、全然いーよ。あ、私もごめんね。驚かせちゃったよね」
「でも、智夜のお嫁さん怪我させちゃった…」
眉を下げて声を震わせて、こんなにしょんぼりしちゃって。なんか、こっちが逆に申し訳なくなってくるんだけど。
「いや、私の方こそごめんね。朝士くんの部屋だって知らなくて、勝手に入ろうとした私も悪かったし。本当に大丈夫だから」
「まぁ、そうだよな」
「……え?」
「結果、俺とぶつかっちゃったワケだけどさぁ。この人の自業自得でもあるよな」
目の前にはヘラッと笑う男の子がいて、私の思考が一瞬停止する。
「彩里ちゃん。朝士はこういう奴なんだよ」
「え、え??」
「えー、だって。そもそも、この人が"きゃー、このツリーハウス!可愛いー"なんて登ってこなけりゃいー話だろ?」
平然と話し続ける朝士くんに、智夜さんが呆れたように溜め息を吐いて口を開いた。
「彩里ちゃん。こいつに反省という思考はないんだよ」
「えっと、はぁ」
「100歩譲って、俺の責任2割くらいじゃん?」
「よし、朝士。言ったな?2割悪いって。じゃぁ、2割分は責任取って貰うからな」


