桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「うっぷ、気持ちわる……」
「は?具合悪いのか?」
やっとキャンプ場に辿り着いて、小屋の後ろに初心者マークのついた軽自動車ジープが前進で雑に駐車される。
後部座席のドアを開けた朝士くんが、首を傾げているけれど。
彼の運転は散々だった。
スピードは遅いのにブレーキは急で、同じところをぐるぐる回るし、交差点ではクラクションまで鳴らされる。
正直、生きて帰れるか分からなくて気が気じゃなかった。
「平気?荷物持つよ!あっ、そっか松葉杖か」
大きなトートバッグを右手に持つ朝士くんが、途中で気がついたようにバックドアから松葉杖を取り出したまでは良かった。
「俺、はじめて使う~。どうやって使うんだ?よっと」
「あの、それ、私が使いたいんだけど」
「あーうん」
ワクワクと両手で松葉杖を使い出し、自分のじゃないと気付くとしょんぼりしてるし。
こいつの気遣いの無さに愕然とするしかない。
はぁ、と大きな溜め息を吐き出して車から降りる。
私だって松葉杖はじめてだし。
両脇に挟んで車から出て、1日ぶりの新居へと向かったその時──。
「きゃっ……、」
松葉杖の先が砂利でボコボコの地面に突っかかって、体のバランスが一気に崩れた。
顔から転ぶ、そう思って目を瞑った瞬間──、身体がふわりと浮かんだ。
「彩里ちゃん、危ない」
「智夜さん!?」