桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「大丈夫?この辺、段差あるから気を付けてね」
「え、あ……はい」
智夜さんに抱きかかえられていた身体は、ひょいっとお姫様抱っこに切り替わる。
「ったく、朝士。足場悪いんだからちゃんと優しく見てやれよ。荷物と松葉杖運べよ」
「えー」
私は智夜さんに抱っこされたままログハウスへと運ばれる。そして、リビングのソファにちょこんと座らされる。
「彩里ちゃん、おかえり」
健康的に焼けた肌。筋肉質でたくましい身体に、がっしりとした腕。
智夜さんが私の目の前にしゃがみ込み、目を細めて穏やかに微笑んだ。
昨日も会っているはずなのに、彼が男の人に見えて心臓が落ち着かない。
「あの、ただいま…でいいんでしょうか?」
「当たり前だよ。ここが彩里ちゃんの家なんだから」
そう言ってから、智夜さんが朝士くんへ視線を向けた。
「朝士は?運転どうだった?」
「うん、結構上達した!」
嘘でしょ!?あれで上達なの?
朝士くんがどや顔を見せるから、思わずギョッと2人の顔を見比べると。
「はは、彩里ちゃんのその顔じゃ怪しいな~ごめんね、彩里ちゃん。俺、どうしても抜けられなくてさ」
次の瞬間、智夜さんの大きな手が頭にポンと乗せられた。
優しく、撫でられるように叩かれるから、なぜかやけに心臓がうるさい。
おかしいな。男の人に免疫がない訳じゃないのに──。
「もう、お兄ちゃんってば誰にでも優しいんだから」