桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
はっとして玄関の方へ顔を向けると、両手を腰に当てた茉昼ちゃんが立っていた。
「ほらほら、お客さん来たから、受付案内行って」
茉昼ちゃんは呆れたように息をはいて、智夜さんに向けて右手でひらひらと払う仕草をみせる。
窓の外を見るとファミリーカーが何台も停まっているのが視界に入った。
夏休みだから子連れが多いんだろうな。小さな子が走り回っているのも見えて……そんな光景になんとなく目をそらす。
「うわー本当だ。一気にきたな~。彩里ちゃん、何か困ったことあったら朝士使っていいからね」
「え、あ、はい……」
「朝士、ちゃんと彩里ちゃんに謝ったの?もー。私も案内入るからまた柊よろしくね!」
すぐ隣の管理棟に向かう2人背中を見送ると、部屋に私と朝士くん、柊くんの3人が取り残される。
朝士くんは受付入らないんだ。茉昼ちゃんのあの感じだと、柊くんが子守り担当なのかな?
「おけがー?いたいのー?」
朝士くんの足の間からちょこんと顔を出したのは、柊くん、2歳。
あとから聞いた話だけれど、私と茉昼ちゃんは同じ学年で同い年だったのだ。
茉昼ちゃんは未婚のシングルマザーで、2年前この子を1人で出産したと話していた。1人でなんて凄いな。きっと、すごく大変だっただろうし、強い人なんだと思う。
「おけがなの?いたいいたい?」
「うん、怪我しちゃったの」
大きな瞳がパチパチとまばたきをして、不思議そうに私の右足を覗き込む。
こんなに小さいのに心配してくれるんだ。
「いたいねー、いたいねー。いたいいたいのとんでけーー」
そして、次の瞬間───、
小さな手が上から大きく振り下ろされた。