桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「悪い、俺ちょっとチェックアウト対応してくるわ」
昨日の団体客ちょっとうるさかったよなー、なんて独り言みたいに続けながら、智夜さんがエプロンを外す。
「いってらっしゃい、お兄ちゃん」
コーヒーを口にしながら、茉昼ちゃんが軽く手を振ると──、
「おい、どっちか手伝えよ」
智夜さんが朝士くんと茉昼ちゃんに目を向けた。
その視線の意味を察したのか、朝士くんの顔色が青ざめてブンブンと首を横に振るから。
智夜さんが諦めたように大きな溜め息を吐いた。
「あー、じゃあ茉昼きて」
「え、午前中から?柊いるんだけど!」
「朝ごはん食べさせてやっただろ?」
「……はーーい。もー、たまには朝士も受付入ってよねー」
ぶつぶつ文句を言いながら、茉昼ちゃんは柊くんを膝から下ろす。
そのまま、柊くんは朝士くんにひょいと抱き上げられた。
結局、このメンバーになるのか……。
「ねぇ、朝士くん。受付そんなにイヤなの?」
智夜さん達が出て行くのを見送った後。
首を傾げれば、彼の肩がビクッと飛び跳ねた。
「無理、無理、無理!!だって、俺、接客向いてねーし!」
自覚はあるんだ。
「俺は、柊担当だからな!」
そして、なぜかエヘンと威張り出す。
……威張るところじゃないんだけどね。
呆れて大きな溜め息が漏れたところで、柊くんが朝士くんの腕の中から身を前に乗り出して口を開いた。
「しゃーり、しゃんぽ!!」
「え、散歩?」
「おしゃんぽー、しゃんぽいくー」
キラキラした大きな瞳が、まっすぐ私に向けられるけど──。
「え、でも私、足がまだ……」