桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「えーー、おしゃんぽーー」
「柊。彩里は怪我治ってないんだからな! 俺と一緒に行くぞ!」
「えーー、しゃいり、いっしょがいい!!」
「ごめんね、痛いから無理なの」
「ほら、ダメなものはダメだ!!」
朝士くんがピシャリとそういい放つと、柊の眉が一気に下がり顔がくしゃりと歪む。
そしてその目にみるみる涙が溜まっていき──、
「ふ、ふぇぇぇぇ……ふぇーーん。やーだ、しゃいりもーー」
次の瞬間、大粒の涙がぽろぽろと溢れはじめる。
え、嘘でしょ……?
「あー……泣き出した……。こうなると手ぇ付けられないんだよな」
朝士くんがチラリと私に目を向け、右手を額に当てた。
***
──で、結局こうなるわけね。
朝士くんと柊くんな並んで、その後ろに松葉杖の私がついて歩く。
柊くんは朝士くんときゃっきゃと騒いでるから、私がいなくても十分だと思うんだけどな。
肌をさす暑さ。緑の木々の隙間から、夏の陽射しが木漏れ日となってこぼれている。
風が吹いているせいか、気温は高いはずなのにどこか涼しく感じる。
不思議だな。地元の猛暑日とは大違いだ。
これが避暑地の素晴らしさなのだろうけど。