桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
管理棟からアスファルトの道を選んで場内を進んでいくと。チェックアウトの時間が近づいてるから、テントを片付けたり布団のようなものを畳んだりしている家族が目に入った。
親と一緒に片付けをする小学生。もっと小さな子は、場内を走り回っている。
そんな光景にぼんやりと気を取られて、舗装された道からぼこぼこ道に足を踏み入れた瞬間──。
「あ、きゃっ……」
「よっと、あぶねーな。つーか、松葉杖危険だな」
バランスを崩した私を、朝士くんが両手でひょいと抱え上げた。
「ちょっと!やめてよ……おろして!」
「なんでだよ?智夜もお姫様抱っこしてたじゃねーか?」
彼が不思議そうに首を傾げるけど、智夜さんより体の線が細いからか顔の距離が近過ぎる。
年下で、こんな細い体なのに。
どこにこんな力があるのだろうか。
なんだか恥ずかしくなって、バタバタと体を動かしてしまう。
「そ、それとこれとは別っ!!」
「なんで智夜は良くて俺はダメなんだよ?」
「えっと、あなたは弟でしょ?智夜さんとは、えっと……その、夫婦だからでしょ!」
私達が言い争いをしていると、サイト内にいるお客さんが何人かこっちを見ているのが分かる。
「ひーも、ひーも、だっこぉーー」
「柊、お前は松葉杖を持てよ!彩里は足 痛ーんだよ」
「だから、大丈夫だって」
「だっこ……、むー。ひー、もつ!!」
柊くんが不満そうに頬を膨らませ、松葉杖を乱暴にに掴んだ。
「あ、おい、振るなって──」
ぶんぶん、と振り回して、その松葉杖の先端がゴツン勢いよく木にに当たるから。嫌な予感がした。
慌てて松葉杖に目を向けると、朝士くんに抱えられてる高さでも分かる。棒の部分がぐにゃりとわずかに曲がっていた。
「……え?」
一瞬、頭が真っ白になる。
嘘でしょ?病院からの借り物なのに。
「信じらんない……!もう無理!
これだから子供なんて大っキライなのよ!!」