桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「1本だけだって~。ほら、準備終わったから外こいよ」
「もう、酔っ払ってるじゃん」
茉昼ちゃんが呆れたようにため息をつく。
「彩里ちゃん、あのね。今日、みんなで集まって夕飯食べようと思ってたんだけど、行けそ?」
「……え、」
柊くんとの事もあったし少し迷ったけど。
茉昼ちゃんがあまりにも申し訳無さそうに眉を下げているから、断わるわけにもいかないよね。
「彩里ちゃん、よっと失礼」
「……っ、」
智夜さんに抱え上げられるのは抵抗はあるんだけど。でも今は松葉杖もないし、誰かに運んで貰うしかない状態だ。
「ちょっと、お兄ちゃん。気を付けてよ?」
「分かってる。大丈夫、大丈夫。ははは」
安定した大きな腕の中。穏やかに笑う彼からはアルコールの香りがした。
朝士くんと比べるつもりはないけど、大人だなと思ってしまう。
智夜さんに抱かれたまま移動すると、管理棟の前には生のお肉や野菜、お酒やジュースが準備されている。
「え、夕飯ってバーベキュー……?」
メッシュタイプのテーブルの真ん中に炭火コンロ。ツーバーナーコンロ。人数分のローチェア。
他にもサラダやポテト、枝豆などよおつまみが並んでいた。
「ほら、主役は座って」
智夜さんが、私の事をふわりとクッション付きのローチェアに座らせる。
「え、主役って?」
「今日は彩里の歓迎会だからな!」
「もう、本当は先週の予定だったのに朝士が怪我させちゃうからさー」
歓迎会やるなんて聞いてないし……。
疑問を投げかければ、朝士くんに続いて茉昼さんが口を開いた。
「だから、あれは俺のせいじゃないって!」
「いーや、あんたのせいよ!」
「ははは」
2人が口論になると、酔っ払ってか頬を赤くした智夜さんが笑い声をあげる。
でも1人足りない。
柊くんは何処にいるんだろう。
キョロキョロと辺りを見渡すと、朝士くんの足の後ろに隠れているのが見えた。
「さっきから隠れてんだよ。彩里めちゃくちゃ怒ってたからなー」
「だって……!!」
「しゃいり、ごめんちゃい」