桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「みちゅき?」
「うん、ミツキっていうお名前にしようと思ってたんだ」
「みちゅきちゃー?」
「そう、ミツキちゃん」
「おそらー?」
そう言って、柊くんが顔あげて空に向ける。そして、両手を頬に当てて空に向かってにこにこと口を開いた。
「みちゃきちゃー、またねー」
「……」
心のつかえは取れないけど、はじめて言葉に吐き出すことが出来た。
和生にも言えなかった名前。
私の心の中だけで、封じ込めた名前──。
胸の奥にあった重たいものが、少しだけ溶けた気がした。
「彩里ちゃーん、お肉食べ頃ーー!」
「……え、本当?やった」
茉昼ちゃんの声に慌てて涙を手で拭う。
「ひーも、おにくー!!」
続いて柊くんが目をぱぁぁと輝かせて叫びだした。
お肉と野菜が乗ったカラトリーのお皿がテーブルに運ばれてくる。
智夜さんもさっきとは違う缶ビールを右手に、皆が集まってきて私の周りを囲んだ。
「じゃぁ、改めてまして。彩里ちゃんの歓迎会はじめまーす!」
「「カンパーイ!!」」
紙コップを合わせて、各自アルコールやジュースを口にしていく。
「お兄ちゃん、飲み過ぎないでよ!」
「大丈夫、大丈夫~。俺、全然酔っ払ってないから」
「ねぇ、彩里ちゃん、聞いてよ。朝士って炭酸飲めないんだよ!お子さまだよねぇ」
「うるさいな!別に飲めなくてもいいだろ?」
茉昼ちゃんがテキパキと料理を取り分けて、ケラケラと表情を変えていくから。ちょっと酔っ払っているのが分かる。
でも、同じ年とは思えないくらい、しっかりしてるな。
「彩里ちゃん、怪我なおったら一緒にお酒飲もうね!」
「……うん」
この先、茉昼さんを妬んだり、柊くんに強く当たってしまうこともあるかもしれない。
でも、私、ここにいていいんだ。
ここが私の居場所だと、少しだけ思えた。