桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
でも、普段はワイルドでしっかり者の智夜さんなのに、こんな無防備な顔を見るのはじめてだな。
ツーブロックで後ろに束ねている髪は乱れているけど、下ろすとどんな感じなのだろうか。
そっと頭に手を触れると、手首をグイッと握られ、そのまま引き寄せられた。
「……えっ、」
「んー、むにゃむにゃ」
智夜さんの腕の中でギュッと抱き枕状態にされる。
え、これいいの?
大きくて力強い腕にどぎまぎを隠せない。
──俺、好きな人がいるんだ
あの契約を交わした日。彼はそう言った。
私のこと、好きな人と勘違いしてるのかな。
「あのー、智夜さん起きてください」
と声をかけたところで、腕の力が弱まることはない。
彼の目は瞑ったまま、右手が腰に回されて反対の手で頭をよしよしと撫でられる。
「よしよし、ひー、ねんねだよ」
「えっ、えー……」
寝かしつけ?
私、柊くんに間違われてるの??
「おやすみ」
半分目を開いた智夜さんが穏やかに笑って、私を見るから胸が飛び跳ねた。そして、その顔が、ゆっくり近付いてくる。
近い。近すぎる。
息がかかる距離に、体が動かなかった。
そして次の瞬間──、唇に彼の柔らかい唇が軽く押し当てられた。
「……え?」
ほんの一瞬。触れただけのキス。
ベッドの上。私は智夜さんに抱きしめられたまま。
彼はそのまま静かに寝息をたてていた。


