桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
04.義弟、ワケありです
「彩里ちゃんがお嫁にきてくれて良かったわ~。ね、あなた」
「あぁ」
「なかなか一緒に食事できなくてごめんなさいね。今日はホテルのシェフ特製ビーフシチューなの。おかわりもあるからね」
私と智夜さんが並んで席に着くと、向かいにはすでに彼の両親が座っていた。
ここはキャンプ場が併設されているホテルのレストラン。キャンプ場から歩いて10分ほど、少し山を下った場所にある。
すぐ隣には和風の本宅が建っていて、ご両親と朝士くん、茉昼ちゃん、柊くんの5人で暮らしている。
白いテーブルクロスの上には自慢のビーフシチューに焼きたてのパン、サーモンマリネ、温野菜サラダなどの副菜が並んでいて、とても豪華で美味しそうだけど。
息をつく間も与えないほど、話を続ける義理母に、ほぼ無言だけど眉間にシワを寄せる義理父。2人の圧迫した空気で、味がよくわからない。
「怪我の具合はどうかしら?」
義母さんが私の右足にチラリと目を向けた。
松葉杖がない今、さすがにお姫様抱っこは恥ずかしいので、ホテルに入ってからは車椅子で移動させてもらっている。
「明日、病院なんだよね」
隣に座る智夜さんが、間に入ってくれるけど、思わずパッと視線を外してしまった。
まずい、かなりぎこちなかったよね。
「まぁ。じゃぁ、明日ギブス外れるの?」
「ははは、そんな早くは外れないよ。ね?」
「は、はい…」
ボッと顔に熱が上がっていくのが自分でも分かる。
駄目だ。智夜さんの顔が見られない。
「じゃあ、明日はあなたが病院へ?」
「いや、朝士にお願いしてあるんだ」
「朝士が?大丈夫かしら?あの子、風変わりな子でしょ?昔から変わってて……中学校もずっと行ってなかったのよ~。大学はなんとか通っているみたいだけれど…」
「……え。あ、けっこう優しいところありますよ」
「まぁまぁ、母さん」
「智夜、あなたもよ。結婚したと思ったらすぐ離婚しちゃってフラフラしててね~。彩里さんみたいな良い人と再婚してくれて良かったわ」
それに関しては、私も離婚、再婚してるんだけどな。
苦笑いしかでなかった。