桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
柔らかい唇が触れた。
1回目は本当に軽く触れるキス。
2回目は下唇をちゅぅっと吸われて。
3回目は──、もう息もできないくらい激しくて。食べられるかと思った。
「うちの母さんがごめんね」
「いえ」
「彩里ちゃん、熱あるかな?」
「いえ」
「顔が真っ赤だよ」
「き、緊張して、水分とれなかったからかな」
智夜さんに抱えられ、自宅へと向かう中。
私は智夜さんと顔を合わせられないでいた。
「彩里ちゃん。俺、昨日酔っぱらって、変な醜態さらしりした?」
「何もないですよ」
「朝起きたら、ごめんね。隣で寝てて……全然覚えてないんだよね」
眉を下げて目を細める。
いつもと変わらない、穏やかな笑み。
そう。彼は昨日の夜の記憶を一切覚えていなかった。
「…………枕に話しかけてました。何度も何度も。それ枕ですよって言っても話しかけてました」
「マジかー」
「だから、智夜さんの顔見ると面白くて、つい顔そらしちゃったんです」
「うわー、恥ずかしいな。ははは」
完全に嘘だけど。
彼は覚えていない。
昨日、私にキスをしてきたことを──。
彼はすごく酔っていて、私にキスをした。
しかも3回も!!
3回目のキスは、本当にもうすごくて。
覆い被さって、両手を掴まれて、舌まで入ってきた濃厚なものだった。
硬いものもあたってたし──。
……っ!!
もー、昼間から何を思い出してるの!?
「いやー、本当に申し訳ない」
「もう見てられませんでした!」
まだ顔は熱くて、平静は装えない。
でも、彼は覚えていないのだから……言わない方がいいよね。と、唇を尖らせる。
「そうだ。さっきの食事の席でさ、朝士のことありがとね」
智夜さんが思い出したように、ふっと口元を緩める。そして、頭に大きな手がぽん、と優しく乗せられる。
だから、こういう態度がズルい──。