桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~




「……え?は?何、急に??」

振り返った朝士くんが、珍しく真面目な顔をしているから、少し驚いた。
突然の質問に思わず声が裏返ってしまう。


「好きなのか?」

「え、……当たり前じゃない!と、智夜さんのこと……好きだから結婚したんだし」

顔がボボッと赤くなったのが自分でも分かる。

朝士くんは知らない筈。私と智夜さんの結婚が契約によるものだということを。
怪しまれないようにしなくちゃと思いつつ、心臓がドキドキして落ち着かない。


「……ふーん。智夜のどこに惚れた?」

「えーと、優しいし、大人だし、ほら余裕と包容力もあるし。あと、笑った顔が──凄く」


私の名前を呼んで、目を細めて穏やかに笑う智夜さんの顔が頭に思い浮かぶ。


「──好き、かな……なんて」

もう完全に茹でダコ状態だ。
でも、なんで私がこんな必死に彼の好きなところを考えて言わなきゃいけないのか。これじゃ公開処刑じゃない。


キス、久しぶりだったな、とか。
大きな手が優しかったな、とか。
アルコールの匂いがしたかな、とか。

彼の身体の重みがガッチリしてて、彼はどんな風に女の人を抱くのかな──なんて私、欲求不満なのだろうか。


余計なことばかり考えて、頬がどんどん熱を帯びていくから。
思わず顔をうつ向けると、大きな溜め息が聞こえてきた。



「彩里って、可哀相だよな」

その声に顔をあげると、明らかにガッカリした表情の朝士くんがいる。

え、何この反応? なんでそんな顔するの?




──あんたは可哀相だね──


"可哀相"この言葉に母親に言われた言葉をが脳裏に浮かんだ。

罪悪感、孤独感、恥ずかしさが一気に押し寄せてきて、松葉杖を持つ両手に力が入って小さく震える


もしかして、バーベキューの夜。
あのとき、柊くんと赤ちゃんの話をした時、朝士くんすぐ近くにいたよね。いや、まさかそんな話題が突然出てくるはずがない──。



「バーベキューの夜、柊……」
「その話はしないでほしい!」


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