桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
大きな声が辺りに響くから、周りの人がどうしたんだろうと私達に視線を向けながら通り過ぎていく。
やだ、やだ、信じられない。なんで、そんな話をしようとするの?
まだ消化しきれていない、ぐちゃぐちゃになった感情で頭が真っ白になり、体のバランスが崩れそうになった。
「おい、危なっ……」
「やだ、離してよ!」
「彩里、悪い。俺、無神経で」
「……」
「悪かったって。彩里、ごめん。うわ、泣くなよ」
「……っ、」
ドクンドクン、と朝士くんの心臓の音が聞こえる。
朝士くんに支えられたまま、彼の胸の中に顔を埋ずめる。なんで、こんなにも感情が不安定なのか、自分でもわからないけど。鼻をズズッと啜った。
「本当に……無神経、」
「昔からよく言われる」
ギッと睨み付ければ、朝士くんがシュンと眉を下げるから。私が悪いみたいじゃない。
だから、お義母さんに"風変わりな子"とか"昔から変わってて"とか言われちゃうのよ!
……中学校行ってなかった、とも言われてたな。
この子も身内《母親》に色々言われてきたのだろう。そう思うと、無神経で子供みたいなところあるけれど 、柊くんの世話もして優しいところもあるし、全てが悪い子ではないんだよな、と少し胸が痛んだ。
もしかして、この子にも傷があるのだろうか。
「にしても、彩里泣き虫だよなー」
私の背中をポンポン叩きながら、朝士くんが「柊みてー」だと軽口をたたく。
え、切り替え早くない?
でも、ガサツな口調だけど、今はそれがかえって救われる気がする。
「それ、朝士くんが言う?」
「いや悪い悪い。ほら、なんか、帰りに旨いもん奢ってやるから」
「……」
反省してるのか、してないのか。分からないけど。彼が子供みたいにニィッと歯を見せて笑うから、馬鹿馬鹿しくなって、つい吹き出しそうになった。
「彩里、笑った!」
「私だって笑うわよ」
「だってお前、怒ってばっかだろ?」
「それは……、朝士くんが怒らせる事するからでしょ!?」
やっぱり、朝士くんデリカシーゼロなんだから。
こうなったら、めちゃくちゃ高いもの頼んでやる。