桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「……!?」
「この間のバーベキューの夜。柊が寝た後、お前等んとこ戻ったんだ。そしたら、彩里の上に智夜が四つ這いで乗ってるだろ……」
ここまで言いかけて、朝士くんが何かを思い出したように手を口に当てた。
「て、あ、悪い。この話、泣くほど嫌なんだよな」
「え、見、て……たの?」
「俺、びっくりしてさー」
朝士くんが、あっけらかんと言葉を続けるから、信じられない!!と、羞恥心でいっぱいになっていく。
「彩里がくる前にさ。智夜から彩里はビジネス的な関係でシェアするって聞いてたからさ。まさか、マジでヤッてると思わなくて」
「……ちょっ、ヤッ………てない」
ヤッてない!ヤッてないけど、周りが気になって声が小さくなってしまう。
え、朝士くん知ってたの?私と智夜さんの関係が本当の結婚じゃないって。
「でも彩里は智夜が好きなんだろ?さっき言ってたじゃん」
「いや、あの、私はてっきり……朝士くんが事情を知らないと思ってたから!」
「智夜の笑った顔が好きなんだろ?」
「……っ!?」
そりゃ、嫌いじゃないけど。
好きと聞かれたら、どうなんだろう──?
「あー、智夜いい奴だけど悪い男だったのか……。あー、でもなー、智夜は難しいかもな」
「え、なん……」
「ワンチャンありなのか?いやー、でもなぁ。まぁ、なんかあったら俺が励ましてやるからな!」
と、私の背中をバシバシと叩いて言葉を続けていく。
朝士くんの言った「可哀想」の意味。
子供のことじゃなくて、智夜さんの事だったんだ。
なんだ、と肩の力が抜けていく。
ホッとしたような、拍子抜けしたような。
「なんだよ?」
「あー、なんでもない。うん、そしたらよろしくね」
「おう、任しとけ!あ、デザート持ってきて貰おーぜ!彩里、頼んで」
変な空気は無くなって、ざわめきを取り戻した店内だけど。知り合いに会ったことで安心したのか、だいぶ慣れたななんて朝士くんをぼんやりと眺める。
十分、優しい子じゃん──。
「朝士くんも、いい奴だよ」
「あん?」
隣で不思議そうに、キョトンとする朝士くんがいる。子供みたいだなと、なんだか可笑しくて思わず笑ってしまった。