桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
05.旦那さまは天然たらし
「あはは、本当に驚いたよ!」
リビングに智夜さんの笑い声が響き渡った。
「すみませんでした。朝士くんと……ちょっと、言い合いをしまして。奢ってやるっていうから、高いの頼んでやるぞーって意地になっちゃって…」
向かいの席に座っている智夜さんが、お腹を抱えてまだ笑っている。
「お店で1番高いの選びました!」
正直にそう言って、椅子に座ったまま深く頭を下げた。
朝士くんと利用したカフェは、SNSでも有名な人気店。
1品の値段も高いのに、その中でも特段に高いハンバーガーセットを選んだ。しかも、デザートまでつけてしまったのだ。
もちろん、自分の分は払うつもりだったのだけど……。
「いやー、カード利用速報で15600円ってスマホに通知きて。3度見したからねぇ」
そう、お会計の時に朝士くんが「智夜が好きなもん食ってこいって言ってた」と出したのは彼名義のクレジットカードだった。
あれには、本当に言葉を失った瞬間だった──。
「あの、私の分、払います!」
「いいよ、いいよ」
「でも…っ、」
「まず、朝士が飲食店に行った時点ですごい出来事だから」
「え……、そうなんですか?」
「しかも観光客で賑わう人気カフェだろ?」
目をパチパチとさせていると、智夜さんがフッと目を細めて穏やかな口調で言葉を続けていく。
「まぁ、彩里ちゃんも気が付いてるだろうけど、あいつ人混み苦手だから。どうせ、飯食べるとしてもコンビニかドライブスルー、それか慣れてる……マッ○くらいだと思ってたからね」
確かに、私がお店を選んだ時、朝士くんはギョッと目を丸くして青ざめていた。「いいぜ!!」なんて強がってたけど。
「だから、そのお礼ってことでいいよ。朝士のSNS映えカフェデビューで15600円」
「いや、それは……!」
「何食べたの?」
「え?あ、写真ありますよ」
「どれ?」
なんて智夜さんが前屈みになって、私のスマホを覗き込んでくるから。顔が少し近くなって緊張が走った。
「えーと、これが食べたハンバーガーで」
「うわ、凄い肉厚だね」
「美味しかったですよ、肉汁も出て!あ、朝士くんも撮ったんですけど、ちょっと青ざめてて笑っちゃいますよね~」
「あはは」
「帰る?って聞くと帰らねぇ!って強がっちゃって……」
と、画面をスワイプしながらどんどん写真を見せていく。
「でもなー、随分と朝士と仲良くなったんだね」
「え?全然、仲良くないですよ」
「少し妬けちゃうな」