桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
穏やかな顔を崩して笑う智夜さんは、いつもより幼く見えた。
智夜さんでも、こんな顔もするんだ。ちょっと子供みたいで朝士くんに似てる。性格は全然違うけど兄弟なんだな……。
「だからさー、柊のやんちゃなんて可愛いもんなんだよ。茉昼もそう思ってるよ……」
「えー、でも、ふふふ。凄い家族の理想ですよね。みんなで柊くんのこと見てる感じで」
「はは、そうかな」
「助け合ってていいなって、思います」
「そう見える?」
智夜さんの大きな手が私の頬に触れる。そのまま髪にかかるまでくしゃくしゃと撫でられるから、ツボに入ったように笑いが溢れてしまう。
「えー、ちょっと智夜さん…ふふっ」
「あははっ、やっぱ笑顔って伝染するよな。彩里ちゃんもめっちゃ笑ってる」
いつもより、子どもっぽい笑い方に、心がくすぐったくて、思わず引き込まれそうになった──
その時、部屋にスマホの着信音が鳴り響いた。
「あー、呼び出しきた」
「し、仕事のですか?」
「うん、行ってくるね。彩里ちゃんはゆっくりしてていいから」
そう言って、智夜さんが小屋を出て行く。
物が散らばった部屋にポツンと1人残されるから、少ししんみり、してしまう。茉昼ちゃんがいないから、何をどう片付けたらいいか分からないし。残されてもすることがない。
「は、くしゅっ」
冷房の効いた部屋で服が湿ってるから、ちょっと体が冷えたかな。
小屋の外に出ると、朝士くんがテラスの床に寝転がっていた。
……昼寝かな、と思ったけど。
近づいてみると、タオルを頭にかぶったまた、うつ伏せになって何か書いているようだった。
「なにしてるの?」
「んー、ちょっと……」
すぐ隣の段になっているところに腰をかけ声をかけると、珍しく真剣な表情で下に視線を向けたままだった。
あ、小屋の中にあったあの設計図みたいのだ。
「これって……このカフェの間取り図?」