桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「ま、うん」
「え、朝士くんが書いたの?」
全体のレイアウトが描かれた紙に、朝士くんはガリガリと鉛筆で数字を書き足しては、トントンと紙を叩く。
「ここ、もうちょい広くしたらさ。外からも入りやすくなると思うか?」
さっきまで川でびしょびしょになって、柊くんと遊んでた人と同じとは思えないな。
「あ、うん。お客さんも入りやすいと思う」
「うーん、この間 彩里と行ったカフェも広かったよな」
あんな青ざめてたのに、お店の中の様子ちゃんとチェックしてたんだ。
「……すごいね。ここが厨房になるの?」
「そう」
「ここはお客さんの席?」
「いや、そこはカウンターで料理だすところだろ。料理運ぶ導線的にもさ」
「え、そこまで考えてるの?」
「あぁ?」
あ、こっち向いた。
眉間に皺を寄せたいつもと違う朝士くんに、一瞬言葉を失う。こんな顔、初めて見た。
いや、結婚式の時も確か──こんな顔をしてた気がする。
人見知りだって言われてるけど、でも、真っ直ぐでじっとこっちを伺うように向けられる視線。
いつも子供みたいだと思ってたけど、すごく、男の子なんだな、と──。
「彩里だったら何色がいい?」
「え、色?」
「うん。壁とか屋根とか」
「えー、私だったら。そうだなぁ……壁は優しい感じの淡い色がいいな」
目を閉じて、小屋の中にあった、木製の椅子やテーブルを思い浮かべてる。どんな雰囲気がいいかな。
「アイボリー的な?」
「そう!屋根はー、明るい緑……青っぽいのがお洒落かな~。ドアとか窓の縁も同じ色で揃えて……」
「うんうん」
朝士くんが鉛筆でササッとラフな外観を描き出して、そこに、周りに散らばった色鉛筆で色を乗せていく。
あっという間に、ラフ画が完成していくから信じられなくて、思わず感心してしまう。
「す、すごいね……」
「面白いよな、自由に作れるんだもんな」
「あ、もしかして、あのツリーハウスも朝士くんが作ったの?」
「あー、あれは中学の時、智夜と一緒に作った!」
なんて、朝士くんがニヒッと歯を見せて、目をキラキラと輝かせる。……いつもの朝士くんだ。
「何回か壊れたり、落ちたりしたけど、その度に一緒になおしてさ!」
「えー、あはは、すごいね」
さっき、智夜さんから子供の頃の朝士くんの昔話を聞かされていたから、余計に情景が浮かんで、笑ってしまう。
「だろ?智夜はすげーんだ!!」