桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
目の前の男の子が、本当に嬉しそうに笑うから。
本当は朝士くんを褒めたんだけど、それを伝えるのは、なんだかためらってしまう。
朝士くんは、智夜さんのことが本当に好きなんだろうな。
自然と笑みがこぼれる──。
「どうやって壊れたの?」
「確か柱が真っ直ぐじゃなくて、斜めになって崩れたりさ。ガタガタするし、床抜けるし。どっかのネジは落ちてるしでさー」
「あはは、なにそれ!」
「……」
「えー、本当に智夜さんと朝士くんって仲良ーんだね!」
朝士くんが、一瞬目を見開いて驚いたように私を見た。
「え、どうしたの?ふふっ、あはは」
「いや、なんでもない……」
落ち着かない様子で目をおよがせてから、頭の上にあるタオルでガシガシと頭を拭きだした。
「まぁ、昔から一緒だしな」
どこか当たり前みたいに言うその感じが、ちょっとだけくすぐったくて。
色々あって、すっかり忘れてたけど。
智夜さんとキスしたこと──。
朝士くんに口止めしなきゃ。内緒にしてほしいって。
「朝士くん、ちょっといい?」
「んー?」
「あのさ、この前の……バーベキューの夜の……話……言わないでほしいの。智夜さんにも、茉昼ちゃんにも」
「バーベキューの夜?」
「そう。ほら、朝士くんが戻ってきた後に……」
「あぁ、ちゅーし……」
「それ!それを内緒にして欲しいの!!」
「んー?」
「と、智夜さん、酔っぱらって覚えてないから…」
「智夜、覚えてない……」
朝士くんが、ぽつりと繰り返す。
一瞬だけ、何か考えるように視線を落とした。
「んー、分かった!」
と、返事をするけど。
"朝士に秘密事は無理だったかー"なんて智夜さんも言ってたし。この子、うっかり口滑らそうだな。
「絶対……、言わないでね」
「おう」
「内緒ね。2人の内緒だからね」
「そんな心配なのかよ?」
「うーん、内緒って思わないで、忘れちゃえばいいの!」
「……忘れるって、上書きすればいーんだよな」
上半身を起こして、私の隣へと並ぶ。
朝士くんが私の顔を覗き込んできて、右手が頬に触れる。
目が合ったけど反らせなくて、 そのまま、距離が一気に近付いた。
唇に一瞬だけ触れて、すぐ離される。
今度は頬、鼻先、額にチュッと音を立てて口づけが続けられていく。
「え?」
そして、最後に再び唇にキスを1つ──。
「おし、完了」
そう言って、柔らかい唇が離される。
朝士くんが満足気に片方の口角を上げて、得意気に笑った。