桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
06.赤裸々な女子会
何が起こったのか分からなくて、頭の中がぐるぐる回る。
思考が追いつかないまま、心臓の音だけがやけにうるさい。
「えーと、何が完了なの?」
「上書き」
朝士くんがケロッと口にして、言葉を続けていく。
「あかねが言ってたんだ。上書きすれば忘れるって」
「……あかねちゃんって、カフェで会った子だっけ」
「そうだ、過去の記憶を新しい経験で置き換えるらしいぞ!」
え、待って。意味が分からない。
朝士くんと話してると、時々私が考えすぎなだけなのか……頭を悩ませた次の瞬間────、
「2人とも何やってるのかな?」
「と、智夜さん…!」
声の方に顔を向ければ、智夜さんがテラスの入り口に立っているから、驚いて息を飲んだ。
「うおっ、智夜!?な、なにもしてねーよ!えっと、あれだ!ただ話してただけだし!!」
朝士くんが顔を真っ青にして、しどろもどろ言い訳するけど。私の頭は完全に真っ白で開いた口も塞がらない。
「はは。……で、本当は何してた?」
じりじりと夏の暑い日差しが肌を刺す。
にっこりと、でもいつもより低い声のトーン。
穏やかな視線が向けられるのに、その場の緊張が強くなる。
沈黙──。私と朝士くん、そして智夜さんの3人の間に、まるで時間が止まったような気まずい雰囲気が流れる。
「はぁ、全く……ここ外だからな。見られないよう気を付けろよ」
智夜さんが大きな溜め息をついてから、朝士くんの頭をパシンと手で叩く。そして、私達に背中を向けて歩き出した。
「……どうすんのよ!?」
彼の後ろ姿を見送りながら、震える声で朝士くんの両肩を掴んで前後に揺らす。
「智夜さんに見られちゃったじゃない!」
「やべーな。でもさ、お前ら契約結婚なんだろ?」
「そんな問題じゃなくて!」
「いやだってさ、智夜だって……」
「違くて、キスは好きな人とするものなの!」
「えー、俺、彩里のこと結構好きだけど」
朝士くんがケロッとそう口にするから、カチンときて、思わず右手を振り上げた。
ばちん!と鮮やかな音が辺りに響く。
「そういう意味じゃないでしょう?」
右頬を手で押さえ、ポカンと口を開けてる朝士くんがそこにいた。


