桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
茉昼ちゃんが中央のポールを持ち上げると、可愛い三角の形をしたテントが立ち上がった。
このお洒落な模様のついたテントはワンポールテントといって、1本のポールとペグ打ちだけで建つ種類らしい。
「茉昼ちゃん。ごめんね、ペグ打ちとか組み立てとか全部やらせちゃって…」
「いーのいーの、慣れてるから任せて!急だったし。彩里ちゃんまだ足が完全じゃないし」
「ありがとー、私キャンプとかテントとか初めてなんだ!」
三角テントの前には、ローチェア、ローテーブル、グリル、焚き火台が並んでいる。
「この間はバーベキューだったから、今日はピザとパスタにしようかなって!ワンパンだったら片付けも楽だし!!」
「えー、すごーい!!」
茉昼ちゃんが慣れた手付きで準備をしていく。
バーナーでチーズを焙るといい匂いが辺りに広がって。あっという間にテーブルの上に料理が並んでいく。
「えへへ、じゃーん!」
彼女がクーラーボックスを開けると、中にはたくさんのアルコール缶がぎっしり詰まっていた。
こんなに準備中してたの!?
目を丸くして見ていると、「冷蔵庫にあったの全部入れきちゃったー」なんてケラケラと笑う茉昼ちゃんがいるから、私もつられて笑ってしまう。
「彩里ちゃん、何系飲む?」
「え、私甘いのがいいな」
「へー。私、ビールにしようっと!」
まだ明るいけど、気温も下がって風がひんやりとしてきた。もうすぐ夏の終わりが近付いてきているのが肌で伝わってくる。
「柊くんは大丈夫そうだった?」
「うん、すぐそこでお兄ちゃんが見ててくれるから」
と、彼女が管理棟の裏にある家を指さした。
「ありがたいね」
「うん、もしかしたら朝士もいるかも。あいつ来たそうだったけど全力で止めておいたから!」
「……へぇ」
徒歩1分もかからないし、ここまで近かったら何かあってもすぐ行けるから安心だけど……。
「じゃぁ、そろそろ女子会はじめますか!?」
「うん!」
「「カンパーイ!!」」
私と茉昼ちゃんの声が重なって、静かな夏の夕方に缶がカチンと合わせる音が響いた。