桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~




おろされた後も、さっきの距離と体温が頭から離れなくて。頭がふわふわしている。
なんだか、落ち着かないまま夜が過ぎていき、いつの間にか重い眠りに落ちていた。

結局、ひどい2日酔いで、数日苦しむことになったのだけど──。







「ひーも!ひーも、やるーー!」

「ちょっと、柊!やめてー!」

テーブルの上にある木箱がガシャーンと音をたててひっくり返り、中身が床の上に散らばった。
割れ物が入っていなかったのが不幸中の幸いなのだけど。


「柊くん、大丈夫??」

「もー、これじゃ進まないよ。この時間いつも朝士と出掛けてたからなぁ。はぁ、アイツも役にたってたのか……」

なんて、茉昼ちゃんが項垂れるも、原因の柊くんは部屋の中を走り回っている。

茉昼ちゃんと一緒に、カフェの片付けと掃除をしているのだけど。
いつも柊くんと遊んでいた朝士くんは、大学の夏休みが終わってしまったから。部屋の中で柊くんが自由に動き回っている状態なのだ。


「ねー、あしょぼー!」

「はいはい、じゃぁ、この落ちたの箱に入れようね」

「やーーー!!」

「はぁ、眠いのかな。彩里ちゃーん、柊お昼寝させてくるから。この辺片付け終わったら戻ってていいから」

柊くんの目蓋が半分下がってうとうとして、物を投げ出した。見かねた茉昼ちゃんが抱っこすると「あしょぶーー、あーー」と騒いでいる。
茉昼ちゃん大変だな。眠くなった柊くんは、本当に手がつけられないのだ。





外に出るとまだ暑さは残っているけれど、以前よりずっと過ごしやすくなっていた。

舗装されていない砂利道。木のせせらぎ、自然の風の音。
最初は不安だった。でも、随分とこの生活に慣れてきたと感じる。

家までの道のりをのんびりと歩いていると、誰か向こうから歩いてくるのが見えた。

キャンプ場を利用している人かな?と思ってなんとなく顔を向けると見覚えのある顔で──、



「あ、やっと会えた」

「え、和生……何で…?」


足が止まって、その場を動けなくなった。



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