桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「彩里ちゃん、どうしたの?なんかソワソワしてる?」
「えっ!?そうですか?」
見せたいものがある、と朝士くんは言った。
──夜、行くから!!そう言い残して。
なんとなく、智夜さんには言えないでいる。
どうせ夜になったら、智夜さんは柊くんを寝かしつけに行くんだし。
わざわざ、伝える必要もないよね。
「あ、この豚汁美味しい」
「本当ですか?」
「うん、和のおかずっていいよね」
そう言って、智夜さんが味噌汁をズズッとすする。
テーブルの上にはご飯と味噌汁、焼き魚、サラダが並んでいる。怪我も治ったし、夕食は担当して作ることにしてみたのだ。
「ふふっ、良かった!お洒落なものはつくれないんですけど……」
「十分すぎるよ」
「いつも朝ごはん作ってもらってるので」
「気にしなくていいのに」
少し照れたように笑う智夜さんに、つられて頬が緩んだ。
「あ、茉昼ちゃん達って、朝ごはんは食べに来るけど、夜は本宅の方で食べてるんですか?」
前から、少し気になっていたことを口にすると、智夜さんは少し箸を止めてから、口を開いた。
「あぁ、茉昼はホテルの方の調理補助にも入ってるからね」
「えっ、そうなんですか?」
「茉昼の場合、柊もいるし。ずっとこっちにいるのも、ちょっとね」
「……あ、朝士くんは?」
「気になる?」
彼のからかうような声に、なぜだか頬にじんわり熱が広がっていく。
「別に気になりません!」
「ははは。あいつは柊と一緒かな。動画でも見てるんじゃない?」
「動画……」
「夕方の柊、めちゃくちゃ機嫌悪いからさ。誰かいないと大変なんだよ」
「なんか、朝士くんっていつも柊くんと一緒にいるんですね」
"遊んでる"のかもしれないけど、昼は大学に通っているのにちょっと大変じゃないのかな。
「じゃ、おやすみ」
夕ご飯の片付けも終わって8時過ぎ。
智夜さんは、そのまま柊くんと茉昼ちゃんが待つ本宅の方へ向かっていった。
いつもこの時間になると、智夜さんが出ていくから、家の中に1人になる。
外からは、キャンプ場のお客さんの声が、かすかに聞こえてきた。賑やかなはずなのに、ここだけ静かで、ほんの少しだけ寂しさを感じることがある。
その時、コンコンと窓を叩く音が響いた。