桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
「えー、なんで窓からなの?」
カーテンを開けると、予想通り朝士くんの顔が覗いた。
いつもはドアを遠慮なくドンドン叩くくせに。
「窓からのほうが、ワクワクするだろ?」
ニヒッと、朝士くんが笑う。
そのまま窓を越えた瞬間、体がふわりと軽くなった。
夜に家を抜け出すなんて、大人になったはずなのに、子どもみたいに"いけないこと"をしている気分になる。
外は、もうすっかり暗くなっていて、昼間はあんなに暑かったのに、夜風がひんやりと頬を刺した。
街灯のほとんどないキャンプ場は、はじめて通る道みたいで少しドキドキする。
「彩里、これ」
差し出されたランタンを受け取ると、ぼんやりと足元を照らす。
「ど、どこに行くの?」
「ほら、彩里が落ちたツリーハウス。お前、あそこの中入ったことないだろ?入る前に落ちたからな!」
「ツリーハウス……?」
ここに初めて来たとき、迷子になって、見つけた場所──。
急なはしごがかけられた先にある、太い幹の上にたつ小屋。
可愛い、なんて思って勝手に登っちゃったんだよな。
見上げると、外観が7色のライトでライトアップされていて。まるで絵本にでも出てきそうなメルヘンチックな扉が見えた。
「足元、気を付けろよ」
「うん……!」
きしッと小さく音を立てるはしご。1段ずつ上がる。のぼりきった先に、平らのスペースがあって、足を空中に下ろし腰かけた。
「ほら、見ろよ」
「……っ、」
空を見上げれば、無数の星が、こぼれ落ちそうなくらいに輝いていた。
「すごいだろ?」
「う、うん……きれい」
「下も見てみ?」
「わぁ……」
そっと身を乗り出して下を覗く。
ツリーハウスから見下ろすキャンプサイトは、昼間とはまるで別の景色だった。
あちこちに灯るテントの明かり。
ゆらゆらと揺れる焚き火の火。
小さな光が点々と広がって、まるで地上にも星が散らばっているみたいで──思わず、息をのむ。