桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~




「俺、人付き合いとかさ、あんま得意じゃなくて。やらかしちゃうことも多いんだけど」

朝士くんが視線を下に向けたまま、ぽつりぽつりと言葉を続けていく。


「ここでぼんりやり空眺めてると、すごく落ち着くんだ」

「そうなんだ」

「彩里、昼間さ……ここが居場所だーって言ってたじゃん?」

「……あ、うん」

「このツリーハウスが、俺の居場所なんだ。智夜が作ってくれたんだ、俺の居場所!なんか、彩里に見せたくなってさ!!」

「素敵……。すごく大事にしたくなる場所だね」

「だろ?元気出るんだよ。復活、みたいな」

「あは、復活?」

「おう。復活!」

「あー、うん。確かに私も今、すごく復活できた気がする」

「ここもいつでも来ていいからな!鍵だいたいしてないし!」

「いや、防犯!」

声を出して笑うと、朝士くんがはにかむように小さく笑顔を見せた。
それから、少しだけ真面目な顔になって口を開く。



「俺さ、彩里が笑うと……、めちゃくちゃ嬉しいんだ」

「えー、なにそれ?」

「大学行ってもさ、彩里いま何してんかなー?とか考えちゃうしさ」

「……ん?」

「なんていうかさ、心があったかくなるっていうかさ。ずっと隣にいたいなーとか」

夏の終わりの空気が、通りすぎていく。
まるで、時間が止まったかのように、静かにゆっくりと。




「俺、彩里のこと好きだ」

「……え?」

けど、次の瞬間──、



「あっ、そうだ!彩里、チョコ好きだって言ってただろ?」

「え?……え、と」

「このアポロの手作りキットやろうぜ!俺の特別なおやつなんだ!」

さっきの空気なんてなかったみたいに、朝士くんが子供のように純粋に目を輝かせはじめるから。


「……は?」

今の、なに?
夜空の星が、やけに遠く感じた。


< 70 / 148 >

この作品をシェア

pagetop